自分に染み込むということ

久方ぶりにシティをお散歩。ランニングはしてたけど、お散歩するのは2週間以上ぶりな気がする。
走るのと違って、歩くということは物を考えたり何かを発見するのにぴったりで、細かい部分を見ることで町が自分に染み込んでくる感覚になる。私はこの「自分に染み込む」という感覚が大好きなのだ。
気に入った本は小説でもエッセイでも何度も読み返す。ジブリのアニメであっても、小さい頃にはセリフを覚えてしまうまで何度も観ていた。音楽ははじめの数秒を聞いただけで曲名がわかる、または曲の終わりを聞くと次の曲のはじめを歌いだせる、というくらい聞いてはじめて本当に好きだと感じる。

でも人と話していて驚いたのが、普通はそんなに読み返したりしないんだということ。特に本。
これは本当に驚きで、あたしにとっては一度も読み返さない本とは、「一度会ったらもう会う必要がないほど興味をそそらない人」のようなものなのだ。いいな、と感じたらまた会うでしょう?その感覚。
しかしまた逆に質問された。「読み返しても知ってる話でしょう?おもしろいの?」と。
確かにあらすじは覚えている。初めて読んで半年ほどのあいだは鮮明に覚えているからよっぽどでないと読み返さない。でも1年くらいたつと、けっこう忘れているもので、「あぁ、こういう話だった」と思い出しながら読む。そして新しい発見がある。
ただこの忘れるペースにしても、あたしに特有の早さなようで、質問してきた方は1年たっても結構覚えているらしい。あたしは読むペースが月に10冊くらいで多めだからかもしれないけれど。(この10冊には読み返してる本も入るので、毎月新しい本を10冊読んでるわけではないですよ。)
印刷された活字がないと生きていけないんだもの。

それと。
すぐになじむということができないから何度も出会ってなじんでいくのかな、とも感じている。何事にもオープンでいたいけれども、はじめから100%委ねます、なんて勇気のあることはできないから、はじめてのものに会うときには、それがなんであれ少し身構えている。それですごく自分が好きだな、と思うものだったらまた会いにいってみる。すると徐々に親しいものになる。
気付くと、いくつものものたちが「自分を構成する一部」になっている。まさに血肉になっているというか。どうしようもなく影響を受けているというか。
その感覚が大好き。時間はかかるけど。

まぁでも、もうちょっと新しいものたちに関しても早めになじめたらいいんだけどなぁ、パソコンとかアプリの新機能とかね。

読書感想文② Cuckoo

『THE CUCKOO'S CALLING』 Robert Galbraith

これも借りた本。ロンドンが舞台の探偵小説で、作者のRobert GalbraithというのはJ.K. Rowlingペンネーム。
ひとつ前に読んだNishino~に比べると、文体とか単語が「生粋のネイティブスピーディーが書いてるってかんじ~!」という印象。だって「怒る」とかの表現でも、あぁ、そういう形容詞あったんだっていうのがいくつも出てきたし、慣用句みたいなものもよく使われてる。
恋人のうちを追い出されて仕事も火の車でお先真っ暗な私立探偵が主人公なんだけど、そこに雇われ秘書(派遣社員ってイギリスでもあるの?)が来て、一緒に有名モデルの自殺に関する再調査の依頼を進めていく、というのがあらすじ。ハリー・ポッター読んだ時にも苦労したんだけど、外国の登場人物の名前覚えるのって大変なのよね。次々出てきたら何がなんだかと思いながら必死に読み進めたのが前半。
真ん中あたりからどんどん状況を想像しやすくなって、さらに自殺したとされるモデルの住んでた豪邸マンションの警備員やらおかかえ運転手、彼女の実の母親の話す下町英語と主人公の話す綺麗(普通?)な英語の対比もおもしろくて。クライマックスはローリングならではのまさかの展開に思わずのめり込み、寝るのを忘れて最後まで読んでしまった。

そう、おもしろかったんです。はじめはそんなにだったんだけど(笑)。
ローリングの作品でいうと日本語に訳された法廷関係の小説がおもしろくなさすぎて、上下巻セットで買ったのに上巻の途中で読むのやめたのが記憶にあって(名前までは覚えていない)、そんなかんじかな~と思っていたけど、そんなことない!おもしろい! 当時の作品は翻訳がよくなかったのか、それとも本当に上巻の内容がつまんなさすぎたのか。読むの途中でやめるってのは覚えてるかぎりあれが初めてだったと思う。まぁハリー・ポッターシリーズの松岡さんの素晴らしすぎる翻訳に慣れていて、そのときにも期待してしまったのも理由のひとつかもしれないね。

おもしろかったと胸をはって言えるこのCuckooに関してちょっと余計なこと言うと、そもそもなんで依頼人は依頼しにきちゃったの?ってのと、いらん展開も多くない?とか思ったりした。英語だから理解しきれてなくて実は必要だったのをわかってないだけだったらごめんなさい(笑)。誰か訳して発売してくれたら読み直しますー!

でもこれを読んだおかげで、ハリー・ポッターも原文で読みたいなと挑戦心がむくむくと湧いてきました。おー!

読書感想文① Nishino

『Ten Loves of Mr Nishino』(原題:ニシノユキヒコの恋と冒険) 川上弘美

友達が英語の勉強のために貸してくれた数冊のうちのひとつで、日本語の小説なら読みやすいかと思って最初に読むことにしたもの。
読み始めて驚いたのが、英語で読んでるにも関わらず、質感・情景が日本の小説そのものだということ。たとえば土管の置かれた空き地の土くささとか、蝉の鳴く夏の情景。Osaka tower(って書かれてたと思う)は通天閣だよなとわかるし、食べ物や地理も知ってるものが出てくるから、言葉が体に染み込んでくる。ちがう言語で読んでいるという感覚にならない。
これは本当に初めての経験で、驚くとともにうれしかった。新鮮すぎる感覚! 例えば大好きなシャーロックホームズを英語(ペンギンリーダーズの簡易版ですがね)で読んだときや英語の記事を読むのとはまた違う、「肌触りが理解できる」という感覚。これはきっと描き方が私の好みでもあったからだと思う。川上弘美さんの小説を日本語で読んだことがないから違ってたら申し訳ないんだけれども、きっと彼女の文体は透明でさらっとしてるんだと想像する。江國香織さんの文章のように。
翻訳された上でももとの文章の触感を感じられるだなんて、素晴らしいなぁと感心した。

それともうひとつ、読みやすいと感じた理由は、小説の土台が、自分の無意識にまで刷り込まれている場所や環境を描いているからなんだな、と納得した。だって日本の一人暮らし用マンションとか蕎麦とかって日本語以外で書かれてようが想像できるけど、キドニーパイだのイギリスの学生寮だのって日本語で書かれてても想像しにくい。そのものを知らないと。ハリー・ポッターを読んだときに想像力を膨らませて読んだのと対照的だったなと思う。

おもしろいのでぜひ日本の小説(難しくないもの)の英訳版を勉強のために読んでみてください。私もすんなり理解できる感覚がほかの作品でも感じられるのかトライしてみようと思います。
あと日本語でこの小説は読み返してみたいかな。映画も観てみたいです。変わった話ですよね。

なんかわからんけどありがたいと思う

おうちの中からメルボルンの街をながめて過ごす1ヵ月。仕事もないしのほほんとしてる場合じゃないんだけど、健康のためにはのほほんとしとくしかないよなぁということで前向きに捉えなおす。
ありがたいことに今の時代って、家族でも友達でも時差関係なく連絡とれるし、電話だって無料でかけれちゃう。ほんとにすごいよねぇ~。オンラインで顔見ながらグループでしゃべれるし、本屋に行けなくても電子書籍で日本語の本だって手に入ってしまう!
10年前に海外旅行したときなんて、宿のネット使わないと家族と連絡取れなかったしなぁ。本なんてたくさん持ってけないから、ガイドブックどれ持ってくかすら真剣に選んだしなぁ。それでも肩に食い込むほど重かった荷物たちよ。現地で調達するのはもったいないからとあれこれ持ってったのが重さの原因やったか。でも現地で高く買うのはちょっとシャクやんかねぇ?

でもこのおうち待機期間のおかげで、よく眠る、新しい本を読む、会えてなかった友達とオンラインで会う、家族と話す、といろいろできたのはよかったことかな。うちの母はこの機会に家のがらくたの整理を始めたらしい。ほんとほんと、あのいらんものたち、元気なうちに片付けてちょーだいと念押し。
そうやって軽口たたけるくらい元気ってことが何よりありがたいかなぁ。とにかく生きてるんだもんね。すごいことよね~。そんで気にかけてくれる人が少なからずいるんだしね。
なんかよくわからんけど、ほんといっつもありがたいよな~と思う。なにに対してかはほんとわからんけど笑