読書感想文① Nishino

『Ten Loves of Mr Nishino』(原題:ニシノユキヒコの恋と冒険) 川上弘美

友達が英語の勉強のために貸してくれた数冊のうちのひとつで、日本語の小説なら読みやすいかと思って最初に読むことにしたもの。
読み始めて驚いたのが、英語で読んでるにも関わらず、質感・情景が日本の小説そのものだということ。たとえば土管の置かれた空き地の土くささとか、蝉の鳴く夏の情景。Osaka tower(って書かれてたと思う)は通天閣だよなとわかるし、食べ物や地理も知ってるものが出てくるから、言葉が体に染み込んでくる。ちがう言語で読んでいるという感覚にならない。
これは本当に初めての経験で、驚くとともにうれしかった。新鮮すぎる感覚! 例えば大好きなシャーロックホームズを英語(ペンギンリーダーズの簡易版ですがね)で読んだときや英語の記事を読むのとはまた違う、「肌触りが理解できる」という感覚。これはきっと描き方が私の好みでもあったからだと思う。川上弘美さんの小説を日本語で読んだことがないから違ってたら申し訳ないんだけれども、きっと彼女の文体は透明でさらっとしてるんだと想像する。江國香織さんの文章のように。
翻訳された上でももとの文章の触感を感じられるだなんて、素晴らしいなぁと感心した。

それともうひとつ、読みやすいと感じた理由は、小説の土台が、自分の無意識にまで刷り込まれている場所や環境を描いているからなんだな、と納得した。だって日本の一人暮らし用マンションとか蕎麦とかって日本語以外で書かれてようが想像できるけど、キドニーパイだのイギリスの学生寮だのって日本語で書かれてても想像しにくい。そのものを知らないと。ハリー・ポッターを読んだときに想像力を膨らませて読んだのと対照的だったなと思う。

おもしろいのでぜひ日本の小説(難しくないもの)の英訳版を勉強のために読んでみてください。私もすんなり理解できる感覚がほかの作品でも感じられるのかトライしてみようと思います。
あと日本語でこの小説は読み返してみたいかな。映画も観てみたいです。変わった話ですよね。